2019年度 事業計画書

(自 2019年4月1日~至 2020年3月31日)

Ⅰ 事業計画の基本方針

  近年、視覚障害者を取り巻く環境は厳しいものが有りますが、障害者の生活と権利を守ることを基本理念に、共生できる社会の一員として積極的に社会活動に参加すると共に、「障害者差別解消法」の下、差別の無い社会の実現を目指して福祉の増進を目的とした普及啓発事業、生活の安定を目的とした能力開発事業及び社会参加推進事業などを実施していく所存です。

昨年度から皆様の温かいご協力の下、会費を値上げさせていただきました。今後、少しでも収入が増加するよう最善の努力を重ねていく覚悟です。これまでの活動を継続しながら、皆様への情報提供に力を注ぐと共に、新しい事業展開を模索していく必要があります。

本年度は私たちが長年にわたり要望してきました点字図書館の現地建て替えが始動することとなりました。移転に伴う事業の変更などがあるかもしれませんが、今年度も以下の事業を実施していきます。

第1点目は、視覚障害者の移動の困難さの解消です。

 視覚障害者の日常生活の中で不自由に感じるものの一つに移動の困難があります。積極的に社会と繋がるには、この問題を解決しなければなりません。それにはハード面の充実とソフト面の支援が必要です。

ハード面では誘導ブロック、音響式信号機、音声案内などを充実させる必要があります。駅ではホームからの転落事故や無人駅が増加する中、安全な歩行を保障するためにも、在来線全駅への内方線付き点状ブロックの敷設が求められます。

さらに、ホームドアなどの設置促進を要望し、交通バリアフリー社会の実現へ運動を展開していかなければなりません。

ソフト面ではガイドヘルパーの支援が最も重要です。障害者総合支援法の制定で同行援護の項目が明記されました。実際に地域で機能するためには、同行支援事業所とガイドヘルパーの数を増やし、使い勝手の良い移動支援体制を構築していかなければなりません。また、単独歩行の視覚障害者に対しては多くの人による声掛け運動の促進が図られるよう運動を推進していく必要があります。

また、近年、大きな災害が増える中で、災害弱者である障害者に対し、市や町の「災害時要援護者避難支援計画」策定の促進を要望していかなければなりません。

第2点目は、情報格差の解消です。

ICT(情報通信技術)の発達により視覚障害者も多くの恩恵を受けられるようになりました。この分野での変化は著しいものがあります。 しかし、高齢の視覚障害者の中には機器の操作に不慣れな人も多く、点字情報誌や音声版として製作された音声情報の提供は欠かせません。特に公的機関からの情報については、行政ごとに取り組みに温度差が生じており、視覚障害者が得る情報に格差が生じています。

点字図書館は視覚障害者への情報提供において重要な役割を果たしています。今後も視覚障害者の意見が十分反映されるよう求めていく必要があります。その他、相談や訓練など支援体制の充実も必須のものとなっています。

さらに、情報のバリアフリー化の視点からも、テレビの視覚障害者向け解説放送の充実が求められます。それと共に、ニュース等での多言語でのコメントの際は、日本語での吹き替えは必要なものです。字幕スーパーの音声化は言うまでもないことです。

第3点目は、職業的安定と生活権の確保です。

  あはき(あん摩・マッサージ・指圧、はり、きゅう)業は本来視覚障害者の生業でしたが、近年は健常者の進出、無資格者の違法営業などで、視覚障害者の職業的安定と生活権がおびやかされています。平成医療学園訴訟では、あはき法19条が職業選択の自由に違反していると訴えていますが、視覚障害者の職域はそれほど広がっているでしょうか。私たちの生活を守るためにも、この裁判を支援し、違法行為については、日本盲人会連合と連携して取り締まりの強化や阻止を強く提言し、対処して行かなければなりません。

今年度は本会が第32回九盲あはき研修会を当番団体として主催することになっております。

私たちは、あはき技術の研鑽に努めると共に、奉仕活動を通じ広く社会参加及び啓発活動の推進に取り組んでいかなければなりません。

また、事務作業などが複雑化する中で、自営業者に対して支援を行う支援員の派遣を求める運動にも取り組んで行く必要があります。

以上の課題の改善を主眼に置き、視覚障害者を取り巻く環境を広く啓発し、福祉の増進を図るための政策提言を行い、自立と社会参加の機会を広めることにより、「障害者差別解消法」の下、差別の無い社会の実現を目指して、今年度の事業活動を推進していきます。

Ⅱ 事業計画の概要

1.福祉大会開催事業

県内の視覚障害者が参加して当面する視覚障害者施策等の諸問題について、各地域の取り組みや情報交換を行い、行政機関などに政策提言をし、視覚障害者を取り巻く環境を広く啓発し、視覚障害者の自立と社会参加の拡大を図り、共生社会の実現と差別の無い社会の実現、福祉の向上を目的として佐賀県視覚障害者福祉大会を開催します。

第69回佐賀県視覚障害者福祉大会

日程:2019年9月1日(日)

場所:佐賀市 メートプラザさが 

参加人数:約150名

2.奉仕活動(マッサージ)事業

県内の高齢者福祉施設へ各地域の視覚障害者福祉協会が中心となって、マッサージの奉仕活動を実施しています。これは地域との交流を深め、社会参加を推進し、併せてあはき技術の向上を図るために有効です。本会はこの取り組みを財政面から支援するため補助金を支給しています。

補助対象:県内の高齢者福祉施設へマッサージ奉仕活動を行った各市・町の視覚障害者福祉協会

補助対象奉仕活動期間:2019年度中に実施した奉仕活動

補助金総額:102,000円

3.福祉機器展開催事業

視覚障害者の生活や学習、職業を支援するための利便性の高い福祉用具が次々に開発されています。

それらの福祉機器を展示して、メーカーより利用法などの説明を受ける場を提供し、視覚障害者の社会生活の質の向上を図ることに寄与することを目的として福祉機器展を開催します。

第24回佐賀県視覚障害者福祉機器展

日程:2019年11月17日(日)

場所:佐賀県立点字図書館

及び社会福祉法人佐賀ライトハウス六星館 

参加人数:約100名

4.視覚障害者生活行動訓練等事業(県の委託事業)

   視覚障害者が生活する上で必要な技術を習得するための行動訓練及び研修会などを実施します。

(1)女性部研修

     女性部を中心に企画し、県内の視覚障害者を対象として実施します。

        保健、家庭生活一般の教養講座

        料理・手芸・お花などの講習

         講師:適宜

         年8回以上

(2)青年部研修

     青年部を中心に企画し、県内の視覚障害者を対象として

ICT機器などの講習を実施します。

        ICT教室

         講師:佐賀県立盲学校教諭他

         年4回以上

        軽スポーツ教室

         講師:佐賀県立盲学校教諭他

         年1回

(3)道路環境調査

  公共機関や駅などに通じる道路を中心に誘導ブロックの敷設状況、音響式信号機、障害物の有無などを調査します。その結果を行政へ報告並びに改善を提案し、また、中途視覚障害者の歩行訓練において、調査結果を参考に注意喚起がなされると共に、「佐賀県視覚障害者福祉大会」等で県内視覚障害者へ情報を提供します。

    日程:2019年12月8日(日)

5.中途視覚障害者緊急生活行動訓練等事業(県の委託事業)

人生の中途で視覚を失うことのダメージは計り知れないものがあります。障害を克服するための心のケアと日常生活に必要な技術を身につけ、社会生活を営むことができるように必要な助言、指導、情報提供並びに訓練や講習会等を開催します。

(1)歩行訓練

中途視覚障害者及び視力低下をきたしている県内視覚障害者の希望者に対して歩行訓練及び日常生活訓練を実施します。

   講師:歩行訓練士

    受講者 約40名

    延べ:約280回以上

(2)点字講習

視覚障害者にとっての読み書きの主な手段は点字です。しかし、その技術を習得するのはかなり困難で丁寧で、きめ細やかな指導と訓練が必要であるため、点字講習会を開催します。

    講師:点字技能士                                            

    受講者 約10名

回数:年7回以上

(3)心のケア相談事業

心の相談事業の経験者や障害を克服して充実した人生を送っている体験者による講演会を開催します。併せて個別の相談に応じます。 

講演会:年1回

相談①視覚障害者リハビリテーション指導員による相談を、年24回実施します。

  ②視覚連会長及び佐賀県身体障害者相談員による電話相談と面談を随時実施します。

6.盲ろう者通訳・介助員養成事業(県の委託事業)

盲ろう者とのコミュニケーションには、高度で専門的な技術が必要であり、通訳・介助員の数はまだまだ不足しています。また盲ろう者向け通訳・介助員の資格を得るためには、佐賀県知事が行う研修の受講が必要です。盲ろう者の利便性をはかるため、本会で佐賀県知事が行う研修を受託し、盲ろう者向け通訳・介助員を育成し、増員を図ります。

研修内容は受託内容に従い、概ね3つの科目について実施します。

①身体障害者福祉の概要

②盲ろう者へのかかわり方

③手話・触手話・点字についての方法及び実技             

講師:国立リハビリテーション学院修了者

点字技能士

全日本ろうあ連盟手話指導者

対象者:盲ろう者の福祉に理解と熱意のある佐賀県内の一般の方で、手話・点字・音訳・要約筆記・介助員等に従事している方、又は視覚障害者あるいは盲ろう者へのボランティア活動をしている方

研修会:年8回 全40時間

7.盲ろう者通訳・介助員派遣事業(県の委託事業)

「盲」と「ろう」の重複障害者のコミュニケーションを支援して社会参加を推進するため、盲ろう者通訳・介助員の派遣手続きの支援を行います。

対象者:県内盲ろう者

盲ろう者通訳介助員の派遣手続き延べ110回以上

8.第32回九盲連あはき研修会

九州盲人会連合会加盟団体のあはき関係者が一堂に会し、視覚障害者を取り巻くあん摩・マッサージ・指圧、鍼、灸業に関する諸問題について討議学習し、情報交換を行い、各地域でのあはき関係者の飛躍を目指すことを目的として開催します。

日程:2019年10月5日(土)・6日(日)

会場:佐賀市 

参加者:九州盲人会連合会加盟団体のあはき関係者   約70名

9.音声版製作事業

視覚障害者の中には点字の読めない人も多いため、公的文書等をCDに音声版として作成し、それを必要とする県内視覚障害者に提供します。

現在は、県内視覚障害者に選挙公報や佐賀市視覚障害者福祉協会の名簿登録者及び希望者には「市報さが」、「さが市議会だより」、「佐賀市のイベント案内」などを音声版として提供しています。また、平成29年度からは鳥栖市視覚障害者福祉協会名簿登録者及び希望者には「市報とす」を音声版として提供しています。本年5月からは神埼市に在住する視覚障害者に「市報神埼」を音声版として作成し、提供を開始します。

10.日用品販売事業

視覚障害者の利便性のために点字用紙など日用品の購入及び手続きの支援を行います。

11.研修旅行

会員の知識を深めると共に、会員相互の親睦を図ることを目的に実施します。

日程:6月16日(日)

場所:唐津市相知町 養護盲老人ホームサリバンの

見学と見帰りの滝のあじさい鑑賞

12.各種会議

    ①総会  (通常総会2回、臨時総会随時) 

    ②理事会 (通常理事会2回、臨時理事会随時)

③監査  (年1回)