令和3年度 事業計画

令和3年度 一般社団法人佐賀県視覚障害者団体連合会 

事業計画

(自 令和3年4月1日~至 令和4年3月31日)

Ⅰ 事業計画の基本方針

  障害者差別解消法が施行され、本県でも「障害のあるなしにかかわらず、ともに暮らしやすい佐賀県をつくる条例」が制定されました。この理念の下、障害による差別のない社会の実現を目指して運動を進めていく必要があります。しかし、現実には多くの問題が生じています。そのような中、障害者の生活と権利を守ることを基本理念に、共生できる社会の一員として積極的に社会活動に参加すると共に、福祉の増進を目的とした普及啓発事業、生活の安定を目的とした能力開発事業および社会参加推進事業などの運動を展開していかなければなりません。

昨年来の新型コロナウイルス感染拡大防止のために、今年度の事業推進において困難な側面もありますが、これまでの活動を継続しながら皆様への情報提供に力を注いでいきます。

私たちが長年に渡り要望してきました新点字図書館の建設及び開館の時期も示されております。名称も「佐賀県立視覚障害情報交流センター」となり、愛称は「あいさが」。令和4年4月1日の開館を待ちたいものです。

今年度も以下の事業を実施していきます。

第1点目は、視覚障害者の移動の困難さの解消です。

 視覚障害者の日常生活の中で不自由に感じるものの一つに移動の困難さがあります。積極的に社会と繋がるにはこの問題を解決しなければなりません。それにはハード面の充実とソフト面の支援が必要です。

ハード面では誘導ブロック、音響式信号機、音声案内などを充実させる必要があります。駅ではホームからの転落事故や無人駅が増加する中、安全な歩行を保障するためにも、全駅への内方線付き点状ブロックの敷設が求められます。さらに、ホームドアなどの設置促進を要望し、交通バリアフリー社会の実現を目指して運動を展開していかなければなりません。

ソフト面ではガイドヘルパーの支援が最も重要です。障害者総合支援法の制定で同行援護の項目が明記されました。実際に地域で機能するためには、同行支援事業所とガイドヘルパーの数を増やし、使い勝手の良い移動支援体制を構築していかなければなりません。また、単独歩行の視覚障害者に対しては多くの人による声掛け運動の促進が図られるよう運動を推進していく必要があります。

また、大きな災害が増える中で、災害弱者である障害者に対し、市や町の「災害時要援護者避難支援計画」策定の促進と視覚障害者が安心して避難生活が送られる施設の整備が図られるよう要望するとともに、福祉避難所の設置を要望していく必要があります。

第2点目は、情報格差の解消です。

ICT(情報通信技術)の発達により視覚障害者も多くの恩恵を受けられるようになりました。この分野での進歩は著しいものがあります。しかし、高齢の視覚障害者の中には機器の操作に不慣れな人も多く、点字情報誌や音声版として製作された情報の提供は欠かせません。しかし、公的機関からの情報については、自治体の中で取り組みに温度差が生じており、視覚障害者が得る情報に格差が生じていることも事実です。

このような中で、点字図書館は視覚障害者への情報提供において重要な役割を果たしております。今後も視覚障害者の意見が十分反映されるよう求めていく必要があります。その他、相談や訓練など支援体制の充実も必須のものとなっております。

さらに、情報のバリアフリー化の視点からも、テレビの視覚障害者向け解説放送の充実が求められます。それと共に、ニュースなどでの多言語でのコメントの際は日本語での吹き替えは必要なものです。字幕スーパーの音声化は言うまでもないことです。

第3点目は、職業的安定と生活権の確保です。

  あはき(あん摩・マッサージ・指圧、はり、きゅう)業は本来視覚障害者の生業でしたが、近年は健常者の進出、無資格者の違法営業などで、視覚障害者の職業的安定と生活権がおびやかされております。平成医療学園訴訟では「あはき法19条」が職業選択の自由に違反していると訴えていますが、視覚障害者の職域はそれほど広がっているとは言えないのではないでしょうか。私たちの生活を守るためにもこの裁判を支援し、違法行為については、日本視覚障害者団体連合と連携して取り締まりの強化や阻止を強く提言し、対処して行かなければなりません。

それと共に私たちは「あはき技術」の研鑽に努め、奉仕活動などを通じ広く社会参加および啓発活動の推進に取り組んでいかなければなりません。

また、事務作業などが複雑化する中で、あはき業者および自営業者に対して支援を行う支援員の派遣を求める運動は、日本視覚障害者団体連合などの運動が実り、昨年4月から地域生活支援事業の中に支援員の派遣と報酬を支払うメニューが加えられ、実施されることになりました。各市や町単位での運用になりますので、本会としてもそれぞれの地域でこの運用の促進を要望していかなければなりません。

以上の課題の改善を主眼に置き、視覚障害者を取り巻く環境を広く啓発し、福祉の増進を図るための政策提言を行い、自立と社会参加の機会を広めることにより「障害者差別解消法」および「障害のあるなしにかかわらず、ともに暮らしやすい佐賀県をつくる条例」の下、差別の無い社会の実現を目指して、今年度の事業活動を推進して参ります。

Ⅱ 事業計画の概要

1.福祉大会開催事業

県内の視覚障害者が参加して当面する視覚障害者施策等の諸問題について、各地域の取り組みや情報交換を行い、行政機関などに政策提言をし、視覚障害者を取り巻く環境を広く啓発し、視覚障害者の自立と社会参加の拡大を図り、共生社会の実現と差別の無い社会の実現、福祉の向上を目的として佐賀県視覚障害者福祉大会を開催します。

昨年度は新型コロナウイルス感染拡大防止のために、会員が一堂に会しての大会が開催出来ませんでした。そのために今年度は節目の70回目を迎え、記念すべき年となります。

第70回佐賀県視覚障害者福祉大会

日程:令和3年9月12日(日)

場所:メートプラザさが 

参加人数:150名

2.奉仕活動(マッサージ)事業

県内の高齢者福祉施設へ各地域の視覚障害者福祉協会が中心となってマッサージの奉仕活動を実施します。これは地域との交流を深め、社会参加を推進し、併せて「あはき技術」の向上を図るために極めて有効です。本会はこの取り組みを財政面から支援するため補助金を支給します。

補助対象:県内の高齢者福祉施設へマッサージ奉仕活動を行った各市・町の視覚障害者福祉協会

補助対象奉仕活動期間:令和3年度中に実施した奉仕活動

補助金総額:102,000円

3.福祉機器展開催事業

視覚障害者の生活や学習、職業を支援するための利便性の高い福祉用具の開発は日進月歩です。

それらの福祉機器を展示して、メーカーより利用法などの説明を受ける場を提供し、視覚障害者の社会生活の質の向上を図ることに寄与することを目的として福祉機器展を開催します。

第25回佐賀県視覚障害者福祉機器展

日程:令和3年12月19日(日)

場所:佐賀県勤労身体障害者教養文化体育館(予定)

参加人数:100名

4.視覚障害者生活行動訓練等事業(県の委託事業)

   視覚障害者が生活する上で必要な技術を習得するための行動訓練および研修会などを実施します。

(1)女性部研修

     女性部を中心に企画し、県内の視覚障害者を対象として実施します。

        保健、家庭生活、一般の教養講座

        料理・手芸・お花などの講習

         講師:その道の第一人者

         年8回程度

(2)青年部研修

     青年部を中心に企画し、県内の視覚障害者を対象として

ICT機器などの講習を実施します。

        ICT教室

         講師:佐賀県立盲学校教諭他

         年4回程度

        軽スポーツ教室

         講師:佐賀県立盲学校教諭他

         年1回

(3)道路環境調査

  公共機関や駅などに通じる道路を中心に誘導ブロックの敷設状況、音響式信号機、障害物の有無などを調査し、その結果を行政へ報告するとともに改善を提案し、また、中途視覚障害者の歩行訓練において、調査結果を参考に注意喚起を促すとともに、「佐賀県視覚障害者福祉大会」などで県内視覚障害者へ情報を提供します。

    日程:12月12日(日)

5.中途視覚障害者緊急生活行動訓練等事業(県の委託事業)

人生の中途で視覚を失うことのダメージは計り知れないものがあります。障害を克服するための心のケアと日常生活に必要な技術を身につけ、社会生活を営むことができるように必要な助言、指導、情報提供ならびに訓練や講習会などを開催します。

(1)歩行訓練

中途視覚障害者および視力低下をきたしている県内視覚障害者の希望者に対して歩行訓練及び日常生活訓練を実施します。

   講師:歩行訓練士

    受講者 約40名

    約280回程度

(2)点字講習

視覚障害者にとっての読み書きの主な手段は点字です。しかし、その技術を習得するには、かなり困難で丁寧で、きめ細やかな指導と訓練が必要であるため点字講習会を開催します。

    講師:点字技能士                                            

    受講者 約10名

回数:年7回程度

(3)心のケア相談事業

心の相談事業の経験者や障害を克服して充実した人生を送っている体験者による講演会を開催します。併せて個別の相談に応じます。 

講演会:年1回

相談①視覚障害生活訓練等指導員・歩行訓練士による相談を、年24回実施します。

  ②視覚連会長・会員および佐賀県身体障害者相談員による電話相談と面談を随時実施します。

6.盲ろう者通訳・介助員養成事業(県の委託事業)

盲ろう者とのコミュニケーションには、高度で専門的な技術が必要であり、通訳・介助員の数はまだまだ不足しています。また盲ろう者向け通訳・介助員の資格を得るためには、佐賀県知事が行う研修の受講が必要です。盲ろう者の利便性をはかるため、本会で佐賀県知事が行う研修を受託し、盲ろう者向け通訳・介助員を育成し増員を図ります。

研修内容は受託内容に従い、概ね3つの科目について実施します。

①身体障害者福祉の概要

②盲ろう者へのかかわり方

③手話・触手話・点字についての方法及び実技             

講師:国立リハビリテーション学院修了者

点字技能士

全日本ろうあ連盟手話指導者

対象者:盲ろう者の福祉に理解と熱意のある佐賀県内の一般の方で、手話・点字・音訳・要約筆記・介助員などに従事している方、または視覚障害者あるいは盲ろう者へのボランティア活動をしている方

研修会:年8回 全40時間

7.盲ろう者通訳・介助員派遣事業(県の委託事業)

「盲」と「ろう」の重複障害者のコミュニケーションを支援して社会参加を推進するため、盲ろう者通訳・介助員の派遣手続きの支援を行います。

対象者:県内盲ろう者

盲ろう者通訳介助員の派遣手続き 110回程度

8.音声版製作事業

視覚障害者の中には点字の読めない人も多いため、公的文書等をCDに音声版として作成し、それを必要とする県内視覚障害者に提供します。

現在は、県内視覚障害者に選挙公報や佐賀市視覚障害者福祉協会の名簿登録者および希望者には「市報さが」、「さが市議会だより」、各種発行物などを音声版として提供しています。また、平成29年度からは鳥栖市視覚障害者福祉協会名簿登録者および希望者には「市報とす」を。令和元年度からは神埼市に在住する視覚障害者に「市報かんざき」の音声版を提供しています。

9.日用品販売事業

視覚障害者の利便性のために点字用紙など日用品の購入および手続きの支援を行います。

10.佐賀県視覚障害者文化祭

会員の芸術作品や文化活動などの発表の場を設けるとともに、一般からの参加者を広く募り実施します。

日程:11月7日(日)

場所:メートプラザ佐賀 多目的ホール(予定)

参加人数:120名

11.各種会議

    ①総会  (通常総会2回、臨時総会随時) 

    ②理事会 (通常理事会2回、臨時理事会随時)

③監査  (年1回)